チャンパ王国衰退期に建立された最後のチャム塔は主祠堂の1棟。
宝物庫は瓦礫を残し崩壊している。
小高い丘の上に位置する遺跡の周囲は見渡す限りの荒野である。この地は1994年2月25日に訪れたが、当時、そこに辿り着くには雨期時の雨の流れが作った川筋に沿って歩くことになり困難であった。
遺跡の屋蓋は四層構造で外壁に施されたニッチにはリシ像の彫刻が填め込まれている。しかし、積み上げられたレンガは不揃で際立った装飾も無く簡素な建造物となっていることで、チャンパ王国の求心力の衰えを強く印象付けている。
内部には朱色に塗られた木造の櫓が立ち、中央には8本の腕を持ったポー・ロメ王を偶像化したシヴァ神の浮彫り彫像が安置され祀られている。
また、荒涼とした風景を遠望する敷地の一角に、この地を死後の場所に選んだポー・ロメ王のお墓であると伝えられるクット(Kut)がひっそりと立っている。
実は、前日の24日、チャム族の集落に暮らすチャンパ王家の末裔で、最後の女王であるグエン・ティー・テム(Nguyen Thi Them)さんに幸運にもお目にかかる機会を頂いた。
撮影時は84歳と高齢で、体調も万全ではなく静養されていた様子であったが、しばらく待っているとゆっくりとした足取りで現れた。
その小柄な容姿はチャム族の伝統的な赤い花柄模様の衣服を着用し、
頭にはターバンに似せた白い布が巻かれていた。
今では象徴的な存在であるが、褐色のサングラスに隠された眼差しは女王としての威光を放っていた。 |