河口沿いの小高い丘から南シナ海を眺望し、海の安全を見守る聖母のチャム塔は主祠堂(1)、副祠堂(3)、列柱廊(1)の5棟が残存している。
主祠堂の正面入口上部には砂岩製でコミカルな動きをした、踊るウマー神の鏡板装飾の彫刻が填め込まれている。
シヴァ神の妻であるウマー神は、内部中央の祭壇に10本の腕を隠し持ち煌びやかな黄色い衣装を身にまとい祀られ崇拝されている。また、その背面には重厚な火炎模様の装飾が施されている。
この遺跡はニャチャンの市街地に立地していることで、昔から周辺の人々にとって礼拝に赴くには都合が良い場所のようだ。
この地を初めて訪れたのはベトナム戦争中の1972年であった。戦時中にも線香を携え訪れていた参拝者の姿が想い出される。
当時の人々は様々な思いを胸に祈りを捧げていたのだろう。
赤茶色の煉瓦に重なるブーゲンビリアの花は、今も変わらず海からのそよ風に揺れている。 |