ホアライ塔
 
  遺跡の名称 : ホアライ塔
  遺跡の年代 : 08〜09世紀
  近くの都市 : Phan Rang (ファンラン)
 
 
 

国道1号線沿いの平地に建つチャム塔は南・北副祠堂の2棟。
建立時は中央に主祠堂もあったが、残念なことに現在は跡形もなく全壊している。

この遺跡を初めて訪れたのは1990年2月の乾期であった。目の前に見る遺跡は何百年もの間、風雨に晒され続け朽ち果てるのを待つかの全容で、屋蓋には草木に混じりサボテンも自生していた。 チャンパ王国滅亡の後には重要視されず放置されてきたことで、その傷みの激しさは不運な歴史を物語っている。
唯一、全盛期の名残りとしては、煉瓦作りの壁面に施された繊細で力強い浮き彫り彫刻がある。それらの装飾模様は細部に渡り見応えがある。

数枚撮影したところで、いよいよ雲行きが怪しくなってきた。ポツリ!ポツリ!大粒の雨が落ちてきた。素早くカメラに布を被せ三脚ごと肩に担ぎ、一気に国道を横切り、先刻、スコールに備えて避難場所に決めていた一軒のあばら屋に飛び込んだ。
次第に本降りとなってきたスコールは穴のあいたトタン張りの屋根を激しく叩き幾筋もの雨漏りがにぎやかに始まりだした。
そんな様子を見兼ねた住人の若夫婦はカメラに被せるための大きなビニールシートを持ち出してきてくれた。降り出せば1時間は止まない亜熱帯気候の天然シャワーである。眺める国道越しの遺跡は徐々に霞んでいき、 さらにスコールが勢いを増す中、隣室の板の間にゴザを敷いた”多目的ルーム”に通された。

先ずは、お茶を頂いていたのだが、しばらくすると若い主人は自家製の Ruou nep (もち米から作ったにごり酒)を自慢げに持ってきて飲めるかと聞いてきた。 当然、飲むと即答した。
その液体は薄灰色に濁り強烈な臭いを放ちながら小さなガラス製の器に気前よく注がれた。Chuc suc khoe!(健康に乾杯!)に始まりUong nua di!(もっと飲め!)と杯を重ねるごとに、降り続ける雨音は心地よく意識から遠のいていった。
にごり酒と一緒にBanh xeo(ベトナム風お好み焼き)も御馳走になった。 後で気付いたが、それは二人の昼食用に準備されていたものだった。

スコールの過ぎ去った空は明るく晴れ渡り、吹き抜ける風は清々しさを感じさせる。気さくで親切な二人に感謝して、何処までも広がる青空を後にした。

数年後に再び訪れたが、その基壇部分には真新しいレンガが安易に足されただけの残念な補修工事が行われていた。もう一つ残念なことは若夫婦の住居跡には国営らしき建物が建ち再会は叶わなかったことだ。

 
 
 
 
 
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